糖尿病薬
内科専門医の外来診察は診療表を参照下さい
糖尿病の治療(インスリン分泌非促進系)
ピグアナイド薬
肝臓に働く薬です。
肝臓から血液中へ放出されるブドウ糖の量を少なくして(グリコーゲンからグルコース(ブドウ糖)になるのを抑制して)、血糖値(グルコース値)が上昇するのを防ぎます。歴史の古い薬で長期服用についての安全性が高く、安価なため、海外ではもっとも多く使用されています。また、インスリンの働きを良くする作用もあり、特に肥満の人に向いています。
この薬は単独では低血糖を起こす危険はありません。
副作用はほとんどありませんが、下痢や胃痛などの消化器症状が起きる場合があるので、服用を開始するときは少量から始めます。非常にまれではありますが乳酸アシドーシスという意識障害を伴う副作用を起こす危険性があり、特に腎臓や肝臓の働きが悪い人、心不全の人、アルコールを多く飲む人は注意が必要です。
チアゾジリン系薬
脂肪細胞に働く薬です。
筋肉や肝臓などのインスリンが働く組織で、脂肪細胞へ作用し、インスリン抵抗性を改善する(インスリンに対する効きをよくする)ことにより血糖値を下げます。インスリンの分泌量には影響しません。このため、単独で服用している場合には低血糖を起こす危険はほとんどありませんが、スルホニル尿素薬・速効型インスリン分泌促進薬・インスリン注射と併用すると低血糖が起こることがあります。主な副作用はむくみ、貧血、息切れで、ときに肝機能障害を起こす場合もあります。塩分摂取量の多い方はむくみにより著明な体重の増加を起こす事がありますので、食事・運動療法が欠かせない薬です。
また、膀胱がん治療中の方・過去に膀胱がんの治療を行っていた事のある方はこの薬は避けた方が良いものになっています。
SLGT2阻害薬
腎臓にはたら薬です。
日本では2014年から使われるようになった新しい薬です。
尿中へ排出するブドウ糖の量を増やし、体内のブドウ糖が減るために血糖値が下がります。通常、血液中のブドウ糖は腎臓を通過すると原尿(尿のもととなるもの)の中へ出ていきますが、再吸収され再び血糖として血液中に戻ります。
本薬はこの再吸収に関わっているSGLT2というタンパク質の働きを抑えることによってブドウ糖が血液中に戻れないようにします。するとブドウ糖が多量に尿中へ排泄させることになり、その結果血糖値が下がります。
余分な糖を尿中へ排泄するため体重の低下作用があり、肥満の人に向いている薬です。
ただし腎臓を通して効果を発揮する薬ですので、腎臓の機能が低下した方に対してはあまり効果が期待できません。
また尿道や膣の感染症、膀胱炎に注意が必要です。減量効果・血圧下降・脂質改善・臓器保護・合併症抑制効果なども期待されている注目の薬です。利尿作用があるので、服用する場合には医師の指示を守る事が大切なお薬です。
αグルコシダーゼ阻害薬
食前に服用する事で炭水化物の分解・吸収を遅らせ、食後の高血糖を抑えます。作用はマイルドですが、放屁・下痢・便秘などの副作用があるので、服用を開始するときは少量から始めます。食事療法と併用すると減量効果も期待できます。
腸内で食物中の炭水化物(多糖)をブドウ糖(単糖)に分解する酵素(α-グルコシダーゼ)の働きを抑えることにより、腸でのブドウ糖の吸収をゆっくりにして食後の急激な血糖値の上昇が抑える薬です。それゆえこの薬は食直前に内服する必要があります。
単独では低血糖を起こすことはまれです。
腸に作用する薬であるため、副作用としておなかの膨らんだ感じ、下痢やおならが多くなるなどの症状を認めますが、多くの場合は服用を続けているうちに少なくなります。
薬物療法(インスリン分泌促進系)
DPP-4阻害薬
小腸から分泌されるインクレチンという消化管ホルモンの濃度を高め、すい臓からのインスリン分泌を促進して血糖値を下げます。血糖値を上昇させるグルカゴンを抑制する効果もあります。効果はマイルドで副作用が少なく、日本では多くの患者さんに使用されています。
摂った食事が胃から小腸に到達すると、インクレチン(GLP-1、GIP)というホルモンが小腸から分泌されます。このインクレチンはすい臓を刺激し、インスリンの分泌を促します。
インクレチンはDPP-4という酵素によってすぐに分解されてしまいますが、このDPP-4の働きを抑えることでインクレチンの作用を高めるのが本薬の特長です。
血糖が高いときだけインスリン分泌を促進させるのがこの薬の特長であり、本薬単独では低血糖はまれです。
日本では2009年から使われるようになった比較的新しい薬です。副作用がかなり少ないことから、特に高齢の2型糖尿病の方に第一選択薬として使用されることの多い薬の一つです。
最近では週に1回内服すればよい、作用時間の長い薬も発売されています。
GLP-1受容体作動薬
インクレチンの一つであるGLP-1と同じ作用を示す薬です。DPP-4阻害薬と同じく血糖が高いときだけインスリン分泌を促進させるのがこの薬の特長です。食前に服用する事で炭水化物の分解・吸収を遅らせ、食後の高血糖を抑えます。
元々注射薬しかありませんでしたが、飲み薬も登場し、日本では2020年から使用できるようになりました。
GLP-1は食欲を抑える働きがあるため、体重の低下作用があり、肥満の人に向いている薬です。
作用はマイルドですが、胃の動きを抑えることで食欲を抑えることから、吐き気やおう吐、下痢、便秘などの副作用が起こる場合があり、服用を開始するときは少量から始めます。食事療法と併用すると減量効果も期待できます。